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ソケイヘルニアの治療法

ヘルニア根本手術:術式詳細

ヘルニア根本手術の術式:Marcy(マーシー)法

■どのタイプのヘルニアか?

これは外ソケイヘルニアでありさらに、横筋筋膜の脆弱が見られない症例に施行されることが多い方法です。主に若年者の外ソケイヘルニアが良い適応です。内ソケイ輪の隙間から出ている余分な腹膜の脱出部(ヘルニア嚢)の処理後に内ソケイ輪の隙間を縫縮するものです。結果的には最も簡便で身体にも優しい手術であると言えます。ただし筋層が弱い人や隙間が大きな人には向きません。

【内ソケイ輪の縫縮(引用:外科治療77巻6号 堀孝吏ほか)】

【内ソケイ輪の縫縮】


ヘルニア根本手術の術式:従来法と人工補強材を用いる方法

ヘルニア根本手術の術式:従来法と人工補強材を用いる方法
外ソケイヘルニアでも内ソケイ輪の開大が大きい場合や内ソケイヘルニアにおける筋層の断裂がある場合手術方法は、以下のように大別されます。
従来法(筋層と筋層を引っ張り縫合する方法:代表なものとしてバッシーニ法)
人工補強材を用いて断裂している穴を塞ぐ方法
 
しかし、もともと弱い筋層同士の無理な引きつけが
引きつれを生じつっぱり感や痛みを感じる
再発(断裂が再び起きる)がおきやすい
術後の安静期間が長い(入院期間が長い)
などの理由により人工補強材を用いて断裂している穴を塞ぐ方法が現在主流になっています。

さて人工補強材を用いる方法として、以下の方法がが代表的です。

メッシュプラグ法
クーゲルパッチ法
DK(ダイレクトクーゲル法)
ポリソフトパッチ法(2010年最新術式)
プロリン・ヘルニア・システム
 
それぞれのヘルニアのタイプにて合った素材を用い断裂した筋層の修復や補強をします。

術式の選択に関しては各施設において様々です。
参考:症例に応じた適切な修復術式
■メッシュプラグ法
【メッシュプラグ法】
【プラグメッシュ】 【プラグ挿入】
【プラグ オンレイメッシュ挿入】 【オンレイ挿入】
【メッシュ(提供メディコン)】
■クーゲルパッチ法
特徴:
クーゲル法はヘルニア修復部にかかる腹圧を利用して、パッチを内側から欠損部に密着させ、閉鎖することで、再発のリスクを軽減させようとするものです。さらにヘルニアが起こりうる部位(Hesselbach三角、内鼠径輪、大腿輪)を同時にカバー、補強することで、あらゆるタイプの鼠径部ヘルニアの再発防止を可能としています。また鼠径管を切開、開放しないので、鼠径管の持つ本来の鼠径ヘルニア発生防止機構を温存する可能性が高いとも言えます。

メッシュ使用の利点は、他のメッシュ同様に組織に過度のtensionをかけないために術後の疼痛、突っ張り感、運動制限などを少なくすることであり、入院期間の短縮、術後愁訴の減少に貢献します。
【クーゲルパッチ(提供メディコン)】 【クーゲル法の解剖図(提供medisuke)】
■DK(ダイレクトクーゲル法)
ダイレクトクーゲル法はクーゲルパッチの製品特長を継承し、前方アプローチ用に 米国で開発された、形状付加型メッシュです。

形状記憶リングが働き、腹膜前腔でパッチが確実に伸張することを可能にしてます。
【ダイレクトクーゲル法】 【ダイレクトクーゲル法の解剖図】

(提供medisuke)
【ダイレクトクーゲルパッチ】 【ダイレクトクーゲルパッチをヘルニア門に挿入】
【ダイレクトクーゲルパッチ】
(写真提供メディコン)
【ダイレクトクーゲル】 【ダイレクトクーゲル】
(提供Medisuke)
特長 利点 効果
形状記憶リング メッシュ形状の維持 腹腔内圧を利用した、
“面”での理想的修復
Underlay Patch 腹膜前腔のカバー範囲 再発率の低下
将来的なヘルニアの予防
ストラップ 固定は2ヶ所のみ QOL向上(術後疼痛軽減)
手技時間の短縮
■プロリン・ヘルニア・システム(PHS)
【PHS】 【プロリン・ヘルニア・システム】

(ジョンソンアンドジョンソン引用)
■腹腔鏡手術
お腹の中にカメラ(腹腔鏡)や処置具を挿入し、お腹の内側から弱くなった筋膜、筋肉に人工補強材を当て補強する方法で、1990年頃より行なわれています。
【腹腔鏡手術トロッカー(器具を入れる穴)挿入部位】

ソケイヘルニアにおいて満足度・確実な手術を行う重要点は下記のとおりです。

(1) 症例に応じた適切な修復術式の選択すること。
(2) 人工物を使用する場合は、フラットメッシュによる腹膜前腔修復術を第一選択とすること。
→代表的な素材としてポリソフトパッチ(ライトウエイトメッシュ)を使用。
(3) 不必要な剥離や神経損傷を避け、縫合固定は吸収糸で安全な部位へ軽く行う。
(4) 併存疾患悪化を防ぐため、基本的に内服薬の休薬や変更を行わない。
(5) 術中の完全除痛と偶発症を最小限とするため、麻酔専門医によるラリンゲルマスクを用いた全身麻酔を施行。
(6) 術後3時間での離床・食事が可能(腰椎麻酔手術では困難)

適切な修復術式


図1
※参考:医療法人社団俊和会 寺田病院 外科 堀 孝吏部長 2010年研究会発表

●ポイント
・ 初発症例と再発症例では癒着剥離の大きさが異なります。
・ 年齢によって横筋筋膜(鼠径管後壁)の強度が違います。
・ ヘルニア門(空いている筋肉の断裂部)が大きいとMarcy法によるヘルニア門縫縮(縫い狭める)手術のみでは不完全です。

以前から使用されていたメッシュプラグ法はヘルニア門や横筋筋膜(鼠径管後壁)の補強という点で不完全な手術が多く見られ、現在多くの再発症例が報告されています(適切な症例に使用されていれば問題ありません)。

【再発症例の手術中に取り出されたプラグ】
写真1



腹膜前腔の補強において現況理論的に良い方法は、下記の2種類です。
●Polysoft パッチ
●ダイレクトkugelパッチ







ただしダイレクトKugelパッチ手術後の再発症例にある問題点が指摘され始めました。

→メッシュが勝手に腹膜前腔を移動する???

本術式におけるdislocation(パッチのズレ)一番の原因は、パッチ挿入時に腹膜に無理な力が加わったまま(腹膜がかなり牽引された状態で)ベルクロエフェクトによりパッチと腹膜が固定されたために起きるのではないかと考えます。腹膜との癒着はこの効果により腹壁との癒着に先立って起きる可能性があります。

最新のパッチであるPolysoftパッチはこのベルクロエフェクトがかなり少なくなっていることが特徴です。

ライトウエイトメッシュ(ポリソフト)とは


パッチの先端(メッシュの折れかえり部分)を鉗子でつかみ、下腹壁動静脈を挙上しながら挿入します。(写真提供: 寺田病院 )



内側は恥骨結節の方向へ、外側は上前腸骨棘へ向けて展開。
外鼠径ヘルニアの場合は、パッチにKeyholeを作成し、精索を通します。(写真提供: 寺田病院 )

 

パッチの留置・伸展・固定



※参考:医療法人社団俊和会 寺田病院 外科 堀 孝吏部長 2010年研究会発表


■内鼠径ヘルニアの場合

【腹膜前腔に展開されたパッチ(内鼡径ヘルニア)】 【ヘルニア門閉鎖時に数針メッシュもひろう】
【縫合固定終了】  
 


外鼠径ヘルニアの場合

【腹膜前腔に挿入する前に内腹斜筋と】
【パッチの両脚に糸を掛けておく】
【パッチの挿入】 【対側のshelving edgeに糸を掛ける】
【外側部の閉鎖とパッチの固定】  
【外鼡径ヘルニアの場合は内側も縫縮】  
   

Polysoft Patchの使いこなしという点で「スリット作成と固定のコツ」
http://med.medisuke.jp/hernia/index.php/entry/show/289
http://med.medisuke.jp/hernia/index.php/entry/show/290

→医療関係者の皆様へ
実習(手術見学)をご希望の先生は 医療法人社団俊和会 寺田病院 での手術見学が可能です。
寺田病院は(株)メディコン推薦のソケイヘルニア クーゲルパッチ法・ポリソフト法の手術手技指導医療機関です。

定期的に手術見学を実施しております。見学・指導をご希望のDrは下記にご連絡ください。
寺田病院 事務長 奈良 03-3898-5231 


■麻酔専門医によるラリンゲルマスクを用いた全身麻酔

日帰りでも入院でも使用される全身麻酔




■最新の手術方法 〜Polysoft パッチによるソケイヘルニア修復手術


ダイレクトクーゲル法におけるパッチのズレや、最大の弱点であった頭外側方の腹膜の敷き込みの減少を改良した、最新法が、ポリソフト法(ライトウエイトメッシュ)

さらに、固定部位が神経から離れているため、術後疼痛の軽減につながるのではないかという期待があります。

【ダイレクトクーゲル法とポリソフト法による術後疼痛の比較】

第71回日本臨床外科学会総会(2009年11月 京都) 葛岡らによる報告によると、
本検討においては、ポリソフト使用により、術後3日目の疼痛がダイレクトクーゲル法に比し、有意に軽減されていました。



【DK法とポリソフト法による術後疼痛の比較】

▼ 2009年1月〜10月まで当院にてポリソフトまたはダイレクトクーゲルを用いた成人鼠径ヘルニア修復術を施行した患者83症例のうち、回答の得られた 64症例(ポリソフト法31例ダイレク トクーゲル法33例)を対象としました。

▼ 手術当日、術後3日目(退院時期)、術後1〜2週目(抜糸時期)、術後1ヶ月目の疼痛を Wong-Baker FACES Pain Rating Scaleを用いて検討しました。

図4
(Wong DLら Wong‘s Essentials of Pediatric Nursing(2001)6:1301)


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各手術法の長所、短所

手術方法 長所 短所
従来法
(バッシーニ法)
人工補強材を用いない
術後の痛みやつる感じが多い
術後の安静、休労期間が長い
→入院期間が長くなる
再発率がやや高い(2〜16%)
メッシュ&プラグ法
クーゲル法
ダイレクトクーゲル法
ポリソフト法
術後の痛みやつる感じが少ない
早期に社会復帰が可能
再発が少ない(通常1%程度)
感染がある場合の使用が制限される
腹腔鏡下手術
術後の痛みやつる感じが少ない
早期に社会復帰が可能
再発が少ない(1〜5%)
人工補強材の使用
全身麻酔が必須
手術時間が長くかかる
費用が他の方法よりかかる
他の手術法と比べ(頻度は少ないものの)重篤な合併症を生じる可能性がある